『あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ』通称あんステ。あんスタ沼に身を沈めて日が浅い私でもその存在は知っていた。星の数ほどある2.5次元作品の中でも、ひときわ人気があることも。人気作品ゆえなのか、定期的に炎上していることも。しかし、俳優はおろか2.5次元作品にさほど興味がない私にとってはしょせん他人事で。役者がやらかしてオタクが燃えているときも、正直な話、対岸の火事を眺めている気分だった。
そんな私がなぜあんステに足を運ぼうと思ったのか。それはもう、最推しである巴日和くんの出演が決まったことにほかならない。
キセキシリーズステージ化の発表があったのは昨年5月のこと。スタライを終えてようやく日常に戻りつつあったところにとんでもねぇ爆弾を落とされたと思ったものだ。新シリーズの発表とともにキャストのビジュアルも公開になったのだけど、これについては正直何の感想もなかった。「この人が日和くんを演じるんだ。ふーん」って感じ。ともあれスタライ5th同様、日和くんが初出演となればとりあえず見に行かなくてはならない。未知の界隈すぎてまったく倍率が読めないまま、ステ開幕へのカウントダウンが始まった。
そんな私を憐れんでかは知らんが、ステに狂った経験をもつ剛の者が「良席にこだわらないなら円盤先行じゃなくても当たると思う」とアドバイスをくれたのだけど、私は円盤を買わずに現場に来るオタクに良い印象がないので申し訳程度に1枚買った。そして倍率が低そうな平日の公演を申し込んだ。これが後にめちゃくちゃなファインプレーになるのだけど、この時の私は当然知る由もない。
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季節は巡り、年が明けると私はけっこうステが楽しみになっていた。年末年始のSSを終えて日和くんへの気持ちが爆発し、何でもいいから日和くんの現場が欲しいと思うようになっていたのだ。それと同時に「公演中止」というワードにも怯えていた。この情勢下だ、○○の舞台が中止になったというニュースが否応なしに耳に入ってくる。出演キャストのSNSを監視して、稽古の進捗と体調をチェックする日々。実際、キャスト数人が同じタイミングで「今日のライブ配信は諸事情により中止します」的なツイートをしていた時期は心臓が止まりかけた。「頼むから無事開幕してくれ」と毎日そればかりだった。
しかし、開幕まで一週間を切ると、今度は突然ステに対する恐怖心が芽生えた。自分にテンゴ耐性はあるのだろうか?推しを演じる俳優を受け入れられるのだろか?おまけに、普段あんスタの現場で連番している相方はテンゴ絶許マンにつき、今回はぼっち参戦だ。隣席が同担だった場合も逃げ場がない。もはや「ぼっち参戦」という言葉も死語かもしれない。心配事はつきなかった。
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2/19(土) 夜
前置きが長くなったが、2022年の2月、今作のあんステ『Track to Miracle』はついに初日を迎えた。楽しみ半分、不安半分。いや、たぶん不安の方が大きかったと思う。なにぶんぼっちなので、ツイッターにひたすら「怖い」と書き込んで日本青年館へ向かう。雨で冷えたせいか緊張のせいなのか、会場でチケット差し出す手が震えた。到着がギリギリだったので真っ直ぐ自席へ。1階の後方だが、大きな会場ではないのであまり遠い感じはしなかった。席に着いてしばらくすると前ナレが流れる。舞台版キャストの声を聞き分けられない私は、はじめは誰が喋っているのかわからなかった。しばらくして、語尾や口調からどうやら英智くんと弓弦くんなのだと悟る。前ナレが終わればいよいよ開演。決戦の火蓋が切って落とされた──。
一幕が終わって休憩に入ったとき、まず頭に浮かんだのは『ステ、こんなに良いなんて聞いてない』だった。よかった。あまりにもよかった。
開演直後はどうしても日和くん「ぽくない」ところにばかり目がいってしまって、メンドクセーオタク全開だった。たとえば「足はそんな風に組まない」とか「ダンスはそんなにアクセント強くない」とか。そして、「やっぱりテンゴの日和くんは日和くんじゃないよな〜」なんて思ったりもした。
だけど徐々に日和くん「らしい」一面も拾えるようになっていった。たとえば表情。日和くんは良くも悪くも感情がそのままお顔に出ちゃう子なので、表情がコロコロ変わるのが大きな魅力だと私は思っているのだけど、それを役者さんがしっかり表現してくれていたのがとても嬉しかった。自分のセリフがあるときはもちろん、ほかの人が喋っている間もず〜っと一人で百面相していて、役者さん──宮城紘大さんの役づくりの綿密さに脱帽した。
それからキャラのシルエットもかなりそれっぽい。これも役者さんの努力の賜物なのだろうけど、日和くんの「ウエストは華奢だけど肩幅は結構しっかりしてる」ところや「筋肉がつきすぎてないスッキリめの腕」など、とにかく身体の完成度が高い。漣役の岸本さんががっつり筋肉つけてきているのも相まって、 サマライの衣装のEveは体格差がガチのEveだった。
それから極めつけは、一幕の生徒会室のシーンでの「つむぎくん!」というセリフ。キッシュを並べて欲しいねってお願いするシーンなんだけど、「わかる〜〜〜日和くんこういう言い方するよね〜〜!!!」って、イイネ!ボタン連打したくなった。こういう「日和くんっぽい」瞬間を探すのがめちゃくちゃ楽しくて、ステに狂うオタクの気持ちが少しわかった気がする。
続いて二幕。こちらはオータムライブが主題になるので、一幕よりは心穏やかに見ていられるだろうと、そう思っていたのだが、あろうことか、脚本にワンゲの内容を混ぜてきやがった!!!
いやね、1ミリくらいは期待したよ?英智くんとつむぎくんが出演するとなれば、旧fine……あるのか?ってね。はい、ありました。キャストライブでは一生聴けないであろう『Genuine Revelation』、いつかスタライで聴けたらいいな〜なんて思っていたけど、まさかあんステで聴くことになるとは……。振りも概ね解釈が一致したし(でも、凪砂くんが英智くんをリフトするときに日和くんとつむぎくんがフロアなのはごめんけどどうしても解せなかった……)何より旧fineの革命の回想シーンの差し込み方が秀逸だった。これは幻聴だったら相当ヤバいと思うのだけど、ライブシーンの後のfineへの喝采のSEの奥に嗚咽が聞こえて、それがまるで日和くんの心が壊れていく様子を表してるようで、私はひたすらに泣いた。
それからトリスタの『BREAKTHROUGH!』はやっぱり強い。あんスタのオタクは大抵この曲を聴くと泣けるように訓練されてると思うけど、サリーの決意と、トリスタの友情をこんなド直球にぶつけられて、正気でいられる方がどうかしてるだろ。ステではこのあと日和くんが「こんなに熱いライブを見せられたらじっとしていられない」ってステージに乱入してきて、そこから全員曲に入るんだけど、この一連の流れも可愛くて大好き。
今回のステの新曲『Track To Miracle』にはトリスタらしさも Eden(というかAdamと Eve)らしさもあって本当に良い。『夢の先で楽園は開く』ってフレーズと、日和くんのソロパが『始めればいいね』ってちゃんと日和くんの語尾になってるところが特に気に入っている。
余談だが、カテコのあとあんステ曲としてお馴染みの『Singin'☆Shine!』(もちろんタイトルは後から知った)が始まったとき、周囲のオタクがみんな踊り出して面食らった。初日ということもあって素人は私くらいだったらしい……。とってもかわいい振り付けなのだけど、役者さんが各々のキャラに合った踊り方をしていてさすがだなぁと思った。日和くんはラストのキックの振り、たぶん『THE GENESIS』を意識してくれてるんだと思う。ありがとう。アーメン。
2/20(日) 昼
二日目は初日の雨模様が嘘のような快晴だった。まるで私の心情のよう。良い日和!!
マチネの席は1階中ほどの下手側。プレミアム席だったので役者さんの表情や動きが初日よりも分かりやすくて、より細かいところに注目できた。
たとえば『キセキ』の落ちサビ前の移動。階段を下りながらの日和くんの動き、おそらく公式MVのファンサっぽい動作を意識してくれているんだと思う。こういう細やかな所作にいちいち嬉しくなってしまう。『Sunlit Smile!』では私がいつか日和くんにして欲しいポーズNO.1の指ハートをしてくれてて、またひとつステの醍醐味を味わった。
それから、初日の公演で少しモヤッとしたポイントが修正されていたのも嬉しかった。茨くんのトリスタへの二人称と、日和くんの「あぁ、その点は心配しなくていいね」というセリフ。初日は若干ドスが効いていて、「あ゛?」って聞こえてだいぶ怖かったのだけど、今回はマイルドになっていて安心した。
また二公演目になると、日替わりのアドリブが差し込まれるポイントもわかってくる。この手の舞台に日替わりコーナーがあることは、昨年ドラマティカの舞台を観劇して学んでいた。ほっちゃんの即興ポーズ(マチネはハリネズミだった)や甘〜い(?)セリフ、それから真くんの眼鏡ネタとか。そうそう、二日目の真くんは眼鏡のシーンで噛んでしまって「そっち踊れる!あ!間違えた!踊れない!もう!わかんなくなっちゃったぁ〜」って言ってたんだけど、こういうセリフを間違えたときの対応もちゃんと真くんらしくてすごいなぁと思うと同時に、これもしわざと間違えてるのだとしたら真くん役の松村さん、とんでもねぇ策士だなと震えた次第。
2/20(日) 夜
3公演目になると役者だけでなく演出面にも目がいくようになってきた。セリフはもちろん、場面の転換にも工夫が凝らされていて、そういうところに注目しながら観劇するのも面白い。
特に好きな演出は、ゆっくんが茨くんの過去について言及するシーン。ゆっくんと茨くんが睨みあって、そのあと茨くんがミリタリーキャップをかぶってはけていく演出があるのだけど、このシーンは役者さんの演技も秀逸で……。それまでの茨くんは背筋をピンと伸ばしてキビキビ歩いているのだけど、この時だけは前屈みで大股にドカドカ歩く。ただ歩くだけのこのワンシーンに茨くんのバッググランドがしっかり詰め込まれて、ありがとう橋本真一さんと思った。
それから、オータムライブの練習中、落ち込んでしまったサリーをつむぎくんが励ますシーン。「きみはTrickstarのメンバーなんですから!」っていうつむぎくんのセリフとともに『BREAKTHROUGH!』のインストが差し込まれて暗転、曲はそのままに明星くんがソロでダンスの練習をしているシーンに繋がるっていう流れがエモすぎて。ほんのワンフレーズ、それもインストなのにここでもやっぱり泣いてしまった。
2/21(月) 休演日
翌日の月曜は休演日だったので、キセキシリーズをいま一度読み返した。私は「‼︎」になってからあんスタにハマったクチなので、正直これまでキセキシリーズにはあまり思い入れがなかった。だって日和くんのキャラぶれてるし……(というか、たぶんまだ定まってなかったのよね。ごにょごにょ)。
AdamとEveはTrickstarのライバルポジとして追加されたキャラなので、キセキシリーズでの立ち位置はいわゆるヒール役。今でこそ日和くんの優しさはみんなの知るところとなったけど、初見でこのストを読んだ人が日和くんの優しさを感じ取れるかと言えばおそらくノーだと思う。だって正直、私もアニスタ放送当時は日和くんの登場回で「なんだこいつ」って思ったから。実際、初期ののストの日和くんってかなり薄情じゃない?
だけどステを通してキセキシリーズの解釈が深まったおかげで、原作ストの行間からも日和くんの優しさや誠実さ、愛情深さをたくさん感じられるようになった。実はトリスタに情が移っちゃってたこと、本当は人を傷つけたくないこと、革命の裏での葛藤、凪砂くんへの想い。ステでは日和くんの心の動きをすごく丁寧に描写してくれていて、なんと言うか、すごく腑に落ちたんだと思う。ステってすごいな。原作の解像度がバカ上がった。
また、改めて原作ストを読み返したことで、今作のあんステは原作以上に英智くんと日和くんの対比を色濃く描いていることに気がついた。
たとえばサマライでは英智くんが「縋るように僕を見られても困るよ、北斗」と、ほっちゃんを突き放すようなセリフがある。原作のストではこのあと「あまり頼られても困るよ、実際。まぁ、どうしてもっていうなら仕方ないけどね……」と続いて英智くんのツンデレっぷりが発揮されるのだけど、ステではこの前半のみが使われていて、けっこう冷ややかな感じがした。一方で日和くんには、原作にはない「あんな縋るように見られて放っておけるほど、ぼくは薄情な人間じゃないね」というセリフがある。これは外出するときにメアリが寂しそうにしていたから連れて出てきてしまった〜というシーンなので、このセリフが本編には直接関係するわけではないのだけど、英智くんと日和くんの愛情表現の違いがよく表れているなと思った。日和くんのようにたっぷりお水をあげて優しく丁寧に磨き上げるのも愛情だし、英智くんのようにあえて千尋の谷に突き落とすのも愛情。根本は似たもの同士なのだろうけどやり方が正反対だから反りが合わないんだろうね、あの二人は……。ああ、これだからステはいいぞ。マジで。
2/22(火) 昼
この日は夜しか観劇の予定はなかったのだけど、運良くチケットを譲ってもらえたので急遽マチネも観劇。この日のマチネ公演に入れたのは本当に、本当に本当に幸運だった。
一幕で日和くんが漣に対して「途中でぼくの悪口を差し込んだことはぜったいに許さないけどね!」って言うセリフ。ここを宮城さんが噛んでしまって「途中でぼくの悪口をさしんこんだkt……んんんん許さない!!!」になってしまって。これが可愛すぎて、私は手にしていたオペグラを思わず太腿に叩きつけた。痛かった。
そうそう、この公演ではようやくシンシャイのときにステージ全体を見ることができた。ほっちゃんを撫で回してる日和くんは相変わらずだけど、明星くんが茨くんにウザ絡みしてたり、凪砂くんと真緒くんがハートつくってたり、漣と真くんがヤンキーコント(?)してたりと、各々がそれぞれの場所で可愛いことをしていてほっこりした。
2/22(火) 夜
サンスマの指ハートが見たくて日和くんをガン見してたら、この日は両手ハートだった。今回で5公演目になるが、こうやって毎公演ファンサの内容や位置を変えてくれるのって本当にプロ意識が高いと思う。日和くんは一幕の途中で「はい音楽止めて〜!ごめんね、歌うと思ったよね?」って、トリスタの歌唱シーンを遮ったことを客席に向かって謝るシーンがあるんだけど、これも毎回指す位置が変わってて、脱帽しっぱなしだ。
この公演はシンシャイのラストで日和くんのイヤモニ(実際のマイクではなく飾りの方)が外れてしまって。それを後ろ向いたときにさりげなく外してポケットに入れるスマートさが日和くんそのもので泣いてしまいそうだった。
2/23(水) 観劇なし
この日は別の現場があったので観劇しなかったのだが、私は翌日の公演に備えて「うちわ」を作った。ライブシーンでお目当てのメンバーを応援するため、ひいてはお目当てのメンバーからファンサを貰うために掲げるアレである。テンゴの現場でうちわを持つ日が来るなんて想像だにしなかった。しかし、これまで5公演観劇して私は思ってしまったのだ。ファンサを貰ってる周囲のオタクがうらやましいと……。
2/24(木) 夜
前日に作ったうちわをバッグに忍ばせて、会場に向かった。この日はトリスタPの知人と観劇する約束をしていて、知り合いと話せる喜びで私のテンションは最高潮だ。久方ぶりに会うトリスタPと近況報告をし合いながら自席へ向かう。満を持しての円盤先行のチケット。上手側だが、ぶっちゃけかなり近い。
開演時間が近づくと、トリスタPは慣れた様子でバッグからうちわとペンライトを取り出し、準備を始めた。さすが剛の者、手つきが違う……(彼女は過去のあんステも全て履修済みという年季が入ったオタクだ。ちなみに私があんさんぶるの沼にハマった元凶でもある)。そんなトリスタPを横目に私もコソコソとうちわを取り出すと、「え!!!うちわ作ったんですね!?!?」と彼女の顔色が変わる。数日前まで「いや、テンゴの俳優にファンサもらってもねぇ……?」なんて舐め腐った態度だった私の露骨な手のひら返しに、ニヤニヤが止まらないといった様子だ。彼女の笑顔には「ようこそこちら側へ」と大きく書いてあった。
さて、またも前置きが長くなったがこの日の公演のほっちゃんの胸キュン(違う)アドリブのコーナーは、「明日のデートの天気が心配なのか……そうか……あ〜した天気にな〜る!!!」と、蹴り上げた靴を空中でキャッチして地面に押しつけ、強制的に"晴れ"にするというものだった。すかさず日和くんが「そんなふうにしてもいい日和にはならないね!!!」と、大声でツッコむさまがたいそう可愛らしかった。日和くんはどちらかと言うとツッコまれる方が多いキャラクターだけど、氷鷹北斗という天性の"ボケ"を前にするとこんなにもキレキレなツッコミ役になってしまうものなのか。ありがとうございます。オタクはうれしいです。
(余談だが、ほっちゃんの圧倒的ボケが尾を引いたせいで、その後の本編で英智くんの「まさか雨でも降らせてサマーライブを中止にするつもりじゃないだろうね?」というセリフの際にも客席からクスクスと笑いが起こっていた)
その後順調に話が進み、舞台のクライマックスに差しかかったころ、突然事件は起こった。
トリスタとAdamのやりとりの中に日和くんが乱入してきて『Track To Miracle』へと繋がるあのシーン。日和くん役の宮城さんがトリスタとの絡みのセリフを盛大に間違えたのだ。「!?」と思ったのも束の間、セリフの言い直しも無意味だと悟ったのか、宮城さんは強行突破ルートを選択した。
「あぁ、ぼくは何を言ってるんだろうね……もう!とにかくみんなで踊ろう!」
笑った。このタミングでステージに上がってくる漣ジュンも笑いを噛み殺せていない。「ちょっとジュンくん!何笑ってるの!!!」怒る日和くん。「笑ってねぇっすよ!」逆ギレする漣。いやお前めちゃくちゃ笑ってんだろ……。
正直これだけでもかなりお腹いっぱいだったのだけど、この日の衝撃はこれだけでは終わらなかった。シンシャイを終えて二度目のカーテンコール。日和くんの立ち位置は上手側。満を持して掲げたうちわ。目線が合う。ん?流れるようなモーションで日和くんの指が真っ直ぐに私を指す。ん??そしてウインク。
は!?!?!?!?個人ファンサもろたんだが!?!?!?
気づいたときにはキャストはもう降壇していて、場内には後ナレが流れていた。思わずトリスタPと顔を見合わせる。なぜか彼女が泣いていた。
この日の終演後、個人ファンサに沸きすぎてすっかり正気を失った私にトリスタPは言った。「客降りのある世界線であんステを見て欲しかった」と。そんな世界線、一生知りたくない。気がおかしくなるに決まってる。
2/26(土) 夜
次の観劇は土曜の夜。金曜の夜公演に入っていないのと、日中アニスタの映画の舞台挨拶があって泣く泣く昼公演を諦めていたので、開演前から禁断症状で指が震えるくらい、私はステに狂っていた。この日は初めて2階席からの観劇。1日ぶりに見る日和くんは、すごく、顔芸が炸裂していた……。
怒っているシーンはほっぺを膨らませてプンスコしているし、笑っているシーンはお日さまみたいな満面の笑顔だし(これはもとからか!)。2階からだし全体見るぞ〜と意気込んでいたけど全然無理で、一生自担ロックオンだった。
そういえば、この日は真くんのメガネギャグが秀逸だったのでここに記す。
「そっち(メガネ)かける!こっち(真)未来を駆ける!それが!トリックスター!」これには会場からも拍手が上がっていた。
「そっちラーメンで曇る!こっちラーメンで太る!」とか言ってた公演もあったのに、えらい違いだな……。
2階席からだと同担が個人ファンサされてるのもしっかりわかって、いっちょ前に私も病んだ。とくに、カテコを終えて去り際に日和くんが両手で銃をつくってバーンと含みたっぷりに同担を打ち抜いているのを目の当たりにして震えた。テンゴの俳優追ってるオタクってメンタル強いよね。経済力もだけど。
2/27(日) 昼
この日、気づいたことがある。一幕の生徒会シーンの最中、英智くんが日和くんが買ってきた荷物を物色して「やれやれ」みたいな顔をしていた。控えめに言ってめちゃくちゃ解釈が一致した。
二幕の冒頭、明星くんの「ジェノサイド学園」ネタもだいぶ仕上がってきている。そしてうれしかったのは、2/20の昼公演の部分でも触れた「あぁ、その点は心配しなくてもいいね」の「あぁ」がなかったこと! これ、ない方がいいとずっと思ってました。
そうそう、ここまで書くのを忘れていたけど、二部で日和くんがつむぎくんを「つむつむ」と呼ぶシーン、これも毎回ニュアンスが違うのよね。「つ〜むつむ」だったり「ちゅむちゅむ」だったり。ちなみにこの日は「つむちゅ〜む」だった(ちゃおちゅ〜るのイントネーション)。かわいい。
それからこの回はプレミアムの上手側で入ったのだけど、前日の公演で同担にファンサしている姿を目の当たりにして病んだ両手バーンを頂いた。日和くんが両手を振り上げたから「なんだろう?」と思いながら見ていたら、そのまま両手で銃をつくって真っ直ぐこっちを指して撃ってくれて。2日前に初めて個人ファンサをもらったときは衝撃で頭が真っ白になったけど、今回は比較的気持ちに余裕があって、「日和くん、オタクを撃ったあとのポーズまで可愛いな」と思いながら推しが捌けていく姿を眺めた。
2/27(日) 夜
昼公演のファンサの余韻に浸っていたら、あっという間に夜公演の時間がきてしまった。私は神戸公演を観劇する予定はないので、今回が現地で見られる最後の公演。初日の公演を終えてからずっと「千秋楽来ないで」と思っていたけど、あっという間にその時を迎えてしまった。
東京公演の楽ということもあってか、全体的にアドリブが少なめだと感じたのだけど(当社比)、そんな中でも日和くんは今までに見たことないアドリブをかましていてさすがだと思った。Trap For Youを披露したあと、いつもは漣に寄りかかってぐだぐだしているのに、この日の日和くんは一生懸命TFYのサビの振りを踊ろうとしていて。漣に嗜められながらもずっと落ち着きなく動いていて、本当に、本当にかわいかった。
ついでに真くんのメガネギャグも冴え渡っていたので今回もここに記す。「そっち(メガネ)視界が広がる!こっち(真)未来が広がる!頑張ろう!おー!」最終日によいものを見せていただきました。拍手。
さて、ここまでの9日間、気づけば9公演を観劇した訳だが、どれだけ数を重ねても観劇中少しも飽きることがなかったし、毎公演3時間があっという間だった。
幕が開く前、ステを受け入れられるだろうかと不安に駆られ、突然天を仰いだり不明瞭な日本語を叫んだりしていた自分が嘘みたいだ。
ステはいい。とてもいいぞ。
短期間で容赦なくステの熱量をドーピングされた結果、私の細胞は舞台オタクのそれにつくりかえられてしまったらしい。「何度も同じ舞台に通うオタクの気が知れねぇ」だなんてとんでもない。たとえ演目は同じでも、同じ舞台は二度と観られない。一公演だって見逃すのが惜しいというオタクの気持ちが痛いほどよくわかった。
これほど魅力的なコンテンツを届けてくれた全ての関係者に心から感謝を申し上げたい。そして何より、誰よりもキャラに寄り添い、彼らと二人三脚で素晴らしい演技を見せてくれたキャストさんに。とくに、日和くん役の宮城紘大さんには大声で感謝を伝えたい。日和くんを演じてくれてありがとう。ステを見ていなかったら、きっとここまでキセキシリーズへの解釈が深まらなかったと思う。あなたのおかげで日和くんのことがまた好きになりました。
信じられないことに私は神戸のチケットを1枚も持っていないので、神戸公演はおそらく配信で視聴するのみになると思うけど(決してフリではない)、キセキシリーズ後編の東京公演が決まった暁にはまた通いたい所存なので、円盤先行の段階から後悔しない戦いができるよう、自戒の念を込めてあえてこの言葉で結ぼうと思う。
私へ。就職してくれ。
次に日和くんに会うときはニートを卒業していると信じて。
(おまけ)
3月1日に宮城さんのLINEライブを見た。日和くんを演じる上で大変だったことや意識したポイントなど、興味深い話を聴けたのはもちろんなのだけど、それ以上に印象的だったのは「巴日和というキャラに毎日救われていた」という言葉だった。ああ、この人も日和くんに救われた人の一人だったんだと思った。そして、それ故のあの解像度の高さかと納得した。
私は常々声優の花江夏樹くんのことを「日和くんの声帯の人」という認識で見ているのだけど、宮城さんの場合は「日和くんの依代の人」という認識はなく、「日和くんに対する解釈が一致している同担」、なんなら「唯一許せる同担」という認識が強い(めちゃくちゃ失礼だけど)。それほどまでに日和くんに対してリスペクトをもって演じてくれている宮城さんに対し、また頭が下がる思いだった。