然りとて無謀\(^o^)/

日々の推しごとと旅の備忘録!

「なんか、全体的にツイてない?」そんな気がした千葉の旅(前編)

近頃ずっと「山へ行きたい」「自然の中に還りたい」という気持ちを抱えていた。そんなときに知ったのが「サンキュー♥︎︎ちばフリーパス」の存在。JRも私鉄も問わず、千葉県内の鉄道が2日間乗り放題になるきっぷだ(一部の区間ではバスにも乗れる)。

千葉といえば、10年くらい前に青春18きっぷで房総半島を一周したとき、鋸山に登ったことがあった。滝に目覚めてからは、濃溝の滝へ行ったり、養老渓谷の滝巡りをしたこともあった。そのときのことを思い返していたら急にまた鋸山の「地獄覗き」や滝のせせらぎが恋しくなってしまった。

パートナーのともこに1泊2日で千葉へ行こうと伝えると「えっ?」という困惑した返事。それもそうか。今月はすでに3連休を利用して名古屋へ旅行する予定があったし。鉄道旅にも未だ消極的なともこを「鴨川シーワールドへ行こうよ」と丸め込んで(ともこは水族館が大好き)、なんとか同行してもらえることになり、名古屋旅行の翌週に千葉を巡るプチ旅行を決行した。

当日は朝6時すぎに家を出る。きっぷは「利用当日でも購入できる」とあったので当日券売機で買おうと思っていたのだが、なんと高円寺の指定席券売機が休止中だった(この企画きっぷは指定席券売機でしか買えない)。早朝の時間帯は駅員さんも常駐しておらず、「指定席券売機をご利用の方はICカードで入場し、下車駅でご精算ください」とある。こんなことなら前日までに買っておくか、中野駅を利用するんだったとリスク管理の甘さを悔やんだが、もう遅い。

とりあえずSuicaで入場して、この先のことを考える。というのも、我々がまず向かおうとしている内房線金谷駅には、指定席券売機がないのだ。近年、JR東日本みどりの窓口を次々と閉鎖し、情弱利用者を混乱の渦に叩き落としたことは記憶に新しいが、たしか浜金谷駅の窓口も粛清の対象(違う)だったはず。「みどりの窓口がある内房線の駅は木更津と蘇我のみになった」というニュースが頭の片隅に残っていた。そのうえ浜金谷駅は時間帯によっては無人だったはず。駅員さんがいれば、きっぷは買えなくても事情を説明して救済策を講じてもらえる可能性もあるが、無人だったらそのときはもう、フリーきっぷの利用は諦めてSuicaで運賃を支払うしかない。途中、錦糸町駅や東京駅、千葉駅で途中下車してきっぷを買いに行くことも考えたが、内房線は目当ての電車を逃すと1時間待つことになる。つくづく自分の見通しの甘さがイヤになるが、ダメだったときはそれまでだと、このまま目的地へ向かうことにした。

学生時代、ろくにお金も持たず青春18きっぷだけを握りしめて旅をしていたときは、旅の道中での不測の事態は「この世の終わり」だと思っていた。だけど実際、この国では大抵のことはお金でなんとかなる。あの頃感じていた「乗り継ぎミスったらこの旅は終わる」という緊張感はもう味わえないのかと思うと、大人になってしまったことがちょっと寂しくもある。

9時10分に浜金谷に着いた。鋸山登山の起点となる駅だ。20分には窓口が開くとのことなので少し待って駅員さんに事情を説明すると、やはりここではフリーきっぷは買えないとのこと。次に安房鴨川へ行く予定だと話すと、「鴨川駅には指定席券売機があるのでそこで買ってください」と、改札を通してくれた。よかった(ちなみにここでも、トイレに行ったら紙がなくて用を足せないというプチアンラッキーがあった)。

浜金谷駅には登山客とおぼしきグループが何組か集まっていて、準備体操なんかをしている。中には本格的な装備の人もいたので、「ここからいくつかの山を縦走するのかな?」なんて想像しながら通りすぎる。私たちは今回「鋸山ロープウェイ」を使うことにしていた。ロープウェイを使えば、山頂駅から20分くらいで地獄覗きまで行けるのだ。10年前に来たときはけっこう急な登りだったと記憶していたので、ここは素直に文明の力に頼る。今日はこのあと鴨川シーワールドへ行く予定もあるし。

ところがロープウェイの駅が近づくにつれ、嫌な予感がした。乗り場の前に人が集まっているのだ。係の人が、「ロープウェイ運休」という看板を出しているのが見えた。そんな! 先ほどまでは動いていたが、強風のため運行を取りやめたらしい。どうしよう。鋸山へ徒歩で登るとなると、1時間半くらいはかかる。山頂は諦めて、ふもとでお茶でもしながら次の電車を待つか……。ともこに聞くと、登ってみたいと言うので、予定にはないハイキングを楽しむことにした。お互いに軽装ではあるが、次の日に滝巡りを予定していたのでトレッキングシューズは履いている。いける。たぶん。同じようにロープウェイを諦めたグループに混ざって、我々も登山道を歩き始めた。

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前日は雨だったのか、登山道はところどころぬかるみ、歩きにくかった。登っているのは「車力道」と呼ばれるコースで、かつて山から切り出した石をねこ車に乗せて運んでいた道。石が敷かれているのだが、かなり急坂でアップダウンも激しい。この日は10月も後半に差しかかるというのに蒸し暑く(都心では真夏日を記録したらしい)、着ていたTシャツの色があっという間に変わってしまった。

こまめに塩分と水分を補給しながら、一歩ずつ、一歩ずつ。1時間ほど歩くと、石切場の跡が見え始めテンションが上がる。

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f:id:majidamepo:20241105223019j:imageコイが泳いでいたけど、この水は干上がらないのだろうか。

最後にダメ押しのように現れた急坂を、なかば手すりにしがみつくようなかたちで登りきり、ようやく日本寺の境内へ。北口から日本寺に入ると、すぐに現れるのがこの百尺観音さま。

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石を切り出した崖の中に、6年かけて掘ったらしい。すごい迫力だ。これを見るとここまで登ってきて良かったと思える。10年前もそうだった。ここからは整備された階段を登って地獄覗きを目指す。

f:id:majidamepo:20241105223149j:image観音さまの前から地獄覗きを見上げる。

境内はかなり賑わっていて、いわゆる「覗き口」には行列ができていた。駐車場からは15分くらいで来られるらしく、お年寄りやワンちゃんも多かった。

覗き口では後ろの人に写真を撮ってもらった。先端部分の足元に大きな水溜りができていたので、身を乗り出して覗き込むことはできなかったのだけど(それに以前来たときより柵が高くなった気がする)、天気の良い日にこの景色を見られて良かった。

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帰りは表参道を通って保田駅へ下りることにした。くだり始めたのが11時過ぎで、駅に着いたのが12時すぎ。舗装された階段で歩きやすかったけれど、階段を下る行程はだいぶ膝に来た。

f:id:majidamepo:20241105223327j:image表参道の様子。ところどころ濡れていてけっこう滑る。

12時15分、再び内房線に乗る。安房鴨川までは1時間ちょっと。電車に揺られながら10年前の18きっぷ旅のことを思い返す。あのときも鋸山に登ったあと、内房線をぐるりと回って上総一ノ宮経由で銚子へ向かったんだっけ。当時はまだ廃墟となった行川アイランドが現存していて、いつか見に来たいなと思ったのを覚えている。残念ながら、それは叶わぬまま取り壊されてしまったけど。

そんなことを考えながらウトウトしているうちに、安房鴨川に着いた。やっと「サンキュー♥︎︎ちばフリーパス」を買える! 駅員さんに事情を話し、きっぷを購入してSuicaの入場記録を消してもらった(千葉県内での購入だったので、県内用のものしか買えなかったのだけど、それはもう仕方ない)。駅でそんなことをしているうちに、鴨川シーワールド行きのシャトルバスが行ってしまった。次のバスまで30分以上あるので、駅の周辺でランチをすることにして、手近なカフェに入る。そんなに混んでいたわけではなかったのだが、頼んだロコモコが待てど暮らせど提供されず、結局次のバスも逃してしまった。さらに次のバスを待っていては水族館に滞在できる時間が限られてしまうので、歩く。15時前にはシーワールドに到着した。

f:id:majidamepo:20241105223421j:image目の前が海! の圧倒的なロケーション。

閉園時間は16時半。かなり早足での見学になってしまったけど、タイミングよくベルーガやシャチのショーが見られて大満足だった。

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16時27分、バスに乗る。日東交通の木更津鴨川線。亀田病院とイオンモール木更津をつなぐ長距離路線だ(この路線もフリーパスで乗車できる)。1時間を超える長距離路線バスにぜひ乗ってみたくて、初日のフィナーレをこのバスで飾ることにした(ともこには5回くらい「何故?」と言われた)。だって気になるじゃない。房総半島を縦断する長距離路線。鴨川駅を過ぎてからしばらく市街地を走っていたバスは、やがて山道に入っていった。脱輪した車が目に入ったときは「こんな山道、私もやりそうだ」と思ったり、「え? こんなところからなんで人が乗ってくるんだろう」というような停留所を経由したり。終バスじゃなかったら降りてみたい停留所もあった。鴨川を出るときはパラパラと降っていた雨が木更津に着く頃にはやんでいて、胸を撫でおろしながら降車した。

回転寿司やまとで夕食をとってからホテルへ向かった。泊まったのは駅前のワシントンホテル。大浴場はなかったけど、部屋の浴槽が広くて最高だった。それと何気なくコンビニで買った入浴剤(おそらく「バブ」だと思うのだけど、パッケージに「疲労」と書いてあったことしか記憶になくて、今も後悔している)。これの威力が凄まじく、足が嘘のように軽くなったうえに泥のように眠れた。自宅でも入浴剤は使っているのだけど、明らかに汗の出方に違いがあって、足湯をしているだけでもサウナみたいに汗が噴き出てきて驚いた。

こうしてホテルのお風呂でリフレッシュしつつ、コンビニスイーツ片手にチバテレを見ながら初日の夜は更けていった(ローカル局の番組を見るのって、地方のビジホ泊の地味な楽しみよね)。

後編へつづく。


撮影:2024年10月中旬